相変わらず少しだけ昼夜逆転生活をしている俺は

いつも通り賑やかな声で目が覚めた。

体を起こしてベッドを降りると腹の虫が盛大に鳴いた。

あぁ、そういえば4日ぐらい飯を食ってなかったな。

然程気にも止めず、デッキへの扉を開く。





「ふぁー…。メシ獲れたかぁー?」

ちゃんおはよーーっ!!!」

「…獲れそうだったのにビビに止められた。」

「ビビに?」





あくびをしながら声を掛けると口を尖らせていじけたルフィが返事をした。

彼の言葉に珍しい事もあるもんだと思いながらビビに顔を向けると

どうやら獲ろうとしていたのは「海ねこ」という海王類で、

アバラスタでは神聖な生き物なんだとか。

ふーむ、なるほど。そりゃしょうがねぇわな!

ということは…





「ビビ!風と気候が安定してきたみたい。」

「ええ…。アラバスタの気候海域に入ったの。

 海ねこが現れたのもその証拠。」

「やっぱり!」

「後ろに見えるあれらも…アラバスタが近い証拠だろう。」





俺はグーッと伸びをしながらゾロの視線の先を見る。



そこには何十隻もの船が水平線の彼方まで続いている。





「!!船があんなに!!…いつの間に!!?」

「おいあれ!全部B・Wのマーク入ってんじゃねェか!!!」

「社員達が集まり始めてるんだわ…!」

「ほー!よくもまぁこんだけの人数を集めたもんだねぇ。

 でもこれは一部なんだろ?」

「えぇ、当たりよさん。

 あれはおそらく『ビリオンズ』!!

 オフィサーエージェントの部下達よ…。」

「敵は200人はかたいって訳だ…。」





えーと、確かオフィサーエージェントってのは

クロコダイルの下にいるトップ5の事だったよな。

必ず男女ペアで、殆どが能力者なんだっけ?

ビビが言うにはウイスキーパークの賞金稼ぎとはわけが違うらしいが

うーむ…考えるのをやめよう。

動揺するウソップ達にゾロが「ザコは気にするな」と力強い言葉を吐く。

まぁこっちは9人しかいないからな。

もっともな意見だ。

俺はその言葉に頷きながらビリオンズの船達の遥か遠くを見つめた。





チラリと浮かんでは消える 炎の海。

ビビのコスプレをしたラッパのおっさん。









おっさん…約束は守ってみせるからな!









小さく笑って思考をメリー号へ戻すとチョッパーが俺の元へやってきた。





!薬を作っておいたんだ!!」

「おぉ、さんきゅ!」





チョッパーから小さな巾着を受け取り、中を確認すると

そこには藍色の丸いビー玉の様な小さな薬が十錠程見えた。





「……宝石みたいな外見の薬だな。」

「もし発作が起きたらこれを一錠飲むんだぞ?」

「水は?」

「なくても大丈夫!飲んで少ししたら治まるから。」

「わかった!今日の分は今飲んでおくな!」

「え!?飲むのは発作が起きた時で…っ」





ニッっと笑って彼の言葉も聞かずに巾着から一錠取り出し、

ガリっと音を立てて薬を飲む。

…そのお味は。





「にっっっっげぇぇぇぇぇえええええ!!!!!」





何だこれ!?

生ゴーヤと肝とピーマンと…この世の苦いものを全て凝縮したような苦さ!!

あまりの苦さに涙が出た程だ。

俺はたまらずキッチンにかけ込んで気の済むまで水を飲み体を清めた。

そこへ慌てて仲間達が駆け寄ってくる。





ちゃん、大丈夫か!?」

「おっ…おぉ…。

 チョッパー、これを発作が起きたら水なしで飲めってか!?」

「苦い薬程よく効くからな!」

「…ご愁傷様。」

「戦う前から死にかけたぜ…。」





ゼェゼェと肩で息を弾ませながらこれからの事を考えた。

戦闘は発作が出る前に終わらせよう。

と、その前に、人の話はちゃんと聞こう。

そう心に固く誓った。



















アラバスタ上陸まであと少し…―――――。


























































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