後に語り継がれる冬島に咲いた桜…“ヒルルクの桜”は まだ名も無きその国の自由を告げる声となって夜を舞う。 舞い散る花びらの中、ゴーイングメリー号はその地を後にした。 船は今、最高速度でアラバスタへ向かっている。 ドラムを出港していくらか経つと、ピンク色の雪はいつしか元の白に戻っていた。 当然、何時間も雪の中で俺達の帰りを待っていたメリー号には分厚い雪が降り積もり 俺達はその上を当たり前の様に歩き、座り、サンジの作った飯を広げた。 広げるや否や、我らが船長・ルフィが木の棒を鼻にさし、下唇に挟んで超笑顔で ドタバタと船内を走り回る。 「あっはっはっはっは!!!めでてーめでてーっ!!!! 月が出てるし桜も咲いたぞ!!!」 それを見るなり声を上げて爆笑する男性陣+俺。 船内には笑い声が響き渡っていた。 「いや、しかしいい夜桜だったぜ…。 まさかこんな雪国で見れちまうとはな!!」 「ああ こんな時に飲まねェのはウソだな!!」 「おいゾロ!俺にも酒さけ!!」 「ほらよ。」 「さんきゅー!…って泡しかねぇ!!!」 「「ぎゃははははは!!!!」」 ゾロとサンジに笑われ、泡しか入ってないジョッキを手に 空いている手で未開封の酒を手にした。 ブチブチ文句を言う俺の酒にまで手を出そうとするゾロに一蹴り入れると 「カルー、あなたどうして川で凍ってたりしたの!!?」 「クェー…。」 うわーん!と泣きながら毛布に包まったカルーの首に抱きつくビビが叫んだ。 俺達が船に戻った時、停泊していた川の中で氷の彫刻と化したカルーを発見した。 急いで船に運び、何とか一命を取り留めたがまだ力なく震えている。 「足でも滑らせたんだろ?」と笑うゾロ。 「ゾロって奴が川で泳いでていなくなったから大変だと思って 川へ飛び込んだら凍っちゃったって。」 手すりに腰かけるチョッパーの通訳を聞くなり「あんたのせいじゃないのよ!!」と、 ゴンッ!といい音を鳴らしながらナミがゾロの頭を殴る。 思わず俺は指をさして笑った。 「トニー君、あなたカルーの言葉がわかるの?」 「おれはもともと動物だから動物とは話せるんだ。」 「すごいわチョッパー!! 医術に加えてそんな 「……………っ!!!バ…バカヤロー! そんなのほめられても嬉しくねェよ!!コノヤローが!!!」 「「「嬉しそうだなー。」」」 ナミの言葉に言葉とは逆にニッコニコしながら手を叩いて踊るチョッパーに 俺とルフィ・ウソップの声がキレイにハモった。 そこへナミへチョッパーの“医術”とは何ぞや?とサンジが質問し、 そこにいる全員がチョッパーは医者でることを知った。 「あんた達…チョッパーを一体何者のつもりで勧誘してたの?」 呆れるナミの言葉にルフィとサンジは腕を組み、さも当然の様に 「七段変形面白トナカイ。」 「非常食。」 「………………!!」 「あははははは!!!」 「も笑うなっ!!」 ゴンッ! 「なんで俺だけ殴られるんだよ!?」 殴られた所をさすりながら訴えると「何となく」と真顔で返された。 一応ケガ人だぞ!?…まぁいいけどさ…。 また殴られたら傷口が開きかねないから酒を握りしめて空のジョッキを持ち カルーとビビの元へ行く。 「ほれカルー、これでも飲めって!!温まるぜ〜? ビビも!確保しとかないと一瞬でなくなるぞ?」 「クェ!!」 「ありがとう。」 「クェクェッ!!」 「おっ!ペース早ぇな!!」 ビビがお礼を言ったと同時にカルーが俺の前に空になったジョッキを差し出す。 俺は笑いながら注ぐと、ルフィと共にドジョウすくいをして笑いをとっていた ウソップが「注目ー!!」と笛を鳴らし、乾杯の音頭をとる。 「えー、ここでおれ達の新しい仲間「カルーあなた飲みすぎよ!!」 「クェーッ!!」 「ビビ、お前も一緒に飲めばそんな事気になんなくなるって!」 「って言いながらさんも注がないでっ!!」 「あはははは!!!」 「オイ、クソコック!もっとつまみ持って来い。」 「おォ!!?てめェ今何つった!? おれをアゴ使おうとはいい度胸だ!!」 「“船医”トニートニー・チョッパーの乗船を祝し「サンジ! 恐竜の肉もうねェのか!!いっぱい積んだだろ!?」 俺とカルー・ビビの後ろでサンジとゾロがケンカを始め、それをルフィが煽る。 皿や酒びんが飛んでくる始末で、もはや誰もウソップの声を聞いていない状態の中 チョッパーがナミに言う。 「おれさ…こんなに楽しいの 初めてだ!!!」 「新しい仲間に!!!乾杯だァア!!!!!」 ウソップの声を合図に誰もが立ち上がりジョッキをガシャンと鳴らす。 さぁ、宴の始まりだ。 □■□ 「一番、唄いまーす!!」 「おぉーーー!!!」 波々と酒の入ったジョッキを振り上げながら気持ちよく酔っていたは 千鳥足で階段を上り、イエー!とおれ達を煽りながら息を吸った。 波の音と共に夜風に乗って運ばれるその唄声は暖かく。 でも信のある力強い声だった。 彼女の唄う唄はこのクルーは誰もが知っているのか、 男達は肩を組んで一緒に歌っていた。 「チョッパー、口。開きっぱなし!」 「はっ!!?」 あまりにも自然におれの心を掴んだの唄に聴き惚れていると 隣にいたナミが笑いながらグイと酒を飲む。 それと偶然にもほぼ同時に唄い終わったは持っていた酒をグイと一口飲み、 口を拭うとチラリとおれを見た。 …気がした。 は右足を手すりにかけ、 「二番!唄いまーす!!!」 「ぎゃはははは!!!どんどんこーいっ!!」 ジョッキをマイクの様に口に運んで息を吸う。 優しく響く、の唄。 それは希望に満ち溢れていて。 弱虫なおれの背中を押してくれる旅立ちの唄だった。 白い息を吐きながら、月をバックに唄うはとてもキレイで。 なんて楽しそうに唄を唄う人だろうと思った。 唄い終わって一礼し、クルー達の声援に手を振り 「三番!唄いまーす!!」 「ぎゃははははは!!!!」 延々と続くのショーに いつしかおれもルフィ達と共に腹がよじれる程笑っていた。 気のすむまで唄い、満足したは再び千鳥足でおれ達の元へ戻り 間髪開けずにジョッキに酒を注ぐ。 「!飲み過ぎだぞ!?」 「おっ!早速“船医”っぽいこと言ってくれるねぇ!! 大丈夫だって。“酒は百薬の長”って言うだろ?」 「そんな言葉もあるけど…でもはもうダメだ! それ以上飲むと寿命を縮めるぞ!?」 おれの言葉に一瞬困った顔を浮かべ、そして苦笑して了承した。 「そーだお前ら。おれ近々死ぬから。」 「「「「「はぁぁぁああああ!!!!??」」」」」 カラカラ笑いながら明るく言うに全員が声を揃え彼女を見ると 笑顔を枯らすことなく淡々と話し始めた。 << BACK NEXT >> |