「ったく…!雪の中で昼寝してるなんて信じられないねっ!!」 「えぇ…俺もそう思います……。」 見張り台で雪景色を眺めていた筈の俺はどうやらそのまま眠っていたらしく、 ゾロに発見され、彼に担がれ暖かい部屋へ帰ってきた。 素足だったから凍傷になりかけていたらしく、急いでお湯を張った桶に足を入れられた。 その間にゾロはルフィ達の元へ戻っていった。 ドクトリーヌの言葉を聞きながら頭を垂れ、自己嫌悪に陥る。 せめて上着を着ていけばよかった! 「お前のお仲間が見つけなければこのまま毒に苦しまずに死ねたのにねぇ。」 そう俺の枕元に立つドクトリーヌはヒッヒッヒと笑いながら言う。 俺は顔を上げ、真っすぐ彼女を見ながら少し困った顔で笑い、返事をした。 正直、あのまま死んでも良いと思った。 ギンさんに会いたい。 あの時の俺にはその想いでいっぱいだった。 だけど、またゾロが“ここ”へ俺を連れ戻してくれた。 彼の分まで生きると決めたのに、それを成し遂げることなく彼に会いに行っても ただ呆れられるだけだ。 …ついでに怒られるんだろうな。 その光景を想像して思わず苦笑いをし、 「なぁ…俺の寿命…少しでも長くするにはどうすればいい?」 俺が真っすぐドクトリーヌを見ると、彼女もそれに答えてくれた。 そして笑みを消し、背を向けた。 「…お前の体内にいる毒はもう消えやしない。 少しでも生きたいと望むならここであたしの治療を延々と受けることだ。」 「うーん…延々とかぁ…。 それは厳しいな。他に何かないのか?」 「ない!さて、あたしは野暮用があるから少し席を外すよ。 大人しく寝てるんだよ!?」 そう言って部屋を後にした。 キッパリ“ないっ!”って言われちゃったなぁ…。 ないならないで逃げるしかないんだけど、 ナミはまだ寝てないといかんだろうし…どうしたものか。 腕を組み、少ない脳みそをフル回転させて逃亡の計画をしていると、 ギィ…と扉がゆっくり開いた。 そこからひょっこりとナミとドルドンさんの家に居た筈のビビが顔を覗かせた。 「ビビ…!?なんで…」 「しっ!事情は後で話します!!」 「、ここから抜け出すわよ!?」 「は?でもナミ、お前体…。」 「なんてことないわよ。死ぬ気がしないもん。 それよりドクトリーヌがいない今しかチャンスないんだから早く!」 「わ…わかった……。」 急かすナミにつられて急いでベッドをおり、コートを羽織る。 …あーあ。折角の新品が俺の血で赤茶色になってら。 後で手洗いしよう。 あ、また素足で出なきゃいかんのか…。 まぁ血行がよくなるし、たまにはいっか! 悠長に考え、準備を終えた俺を見てナミが言う。 「ねぇ、あんた泣いたの?」 「!!?な…なんで!?!?」 「あぁ、やっぱ図星なのね!目、腫れてるわよ?」 何て初歩的ミス!! そして何故そんなことに気付くんだ姉さん!!! ビビは何も言わずにこちらを見つめている。 うわーっ、恥ずかしい!! でも嘘はよくないし…。 俺は冷や汗ダラダラで、視線を2人から外し 「白い世界を見てたら…その……大事な人を想い 出して…………。」 言葉にしたらしたで再びあの人の笑顔がチラつく。 少し胸が苦しい。 締め付けられる、消せない想い。 俺は今、どんな顔をしているのだろう。 ナミとビビはお互いの顔を見合わせて笑う。 「あんたも女々しい所があったのねー!」 「ナミさん…さんに失礼……。」 「ビビ、もっと言ってやってくれ。」 俺の言葉に2人が再び声を上げて笑った。 言い表せない想いがグッと込み上げる。 どうしよう…また泣きそうだ。 こいつらは、暖か過ぎる。 「……ありがとな。」 「え?何か言った!?」 「私も聞こえなかったわ。さん、何か言ったの?」 意地悪な笑みを浮かべる2人の答えに俺は笑い 「いや、何も…。」 そう言って周りを警戒するナミとビビに続いて部屋を出る。 隣にサンジがいたらしく、ナミとビビが足を持って引きずりながら彼を連れ出した。 俺も手を貸そうとしたんだけど、頑として拒否された。 ズルズルとサンジを引きずりながら俺達は城の出口へ向かう。 ――――― ねぇ、ギンさん? ここはとても暖かいよ。 だからもう少し“ここ”で頑張ってみるね。 << BACK NEXT >> |