廊下へ出ると聞き覚えのある笑い声が耳に届いた。 その声に安堵し、自然に緩む口元。 俺は口端を上げながら一つ息を吐き 「よう!生きてっか!?」 松葉杖で体を支えながら空いている手を上げ、笑いながら部屋へ入った。 「ちゃん!?可愛い顔に包帯が!それに松葉杖…!! 言ってくれればおれが君の心の松葉杖になるのに!!!!」 「あほか。」 「、そんなにケガはひどいのか?」 「まさか!ドクトリーヌがどうしてもって言うからさ〜!!」 カラカラ笑いながら手をおばちゃんみたいにパタパタ振っていると 「ほほーう?ベッドに突っ伏して喚いていたのはどこの誰だっていうんだい?」 「ギャーー!!!すんませんでしたーーーー!!!!!」 背後から殺気の籠った声を聞き、咄嗟に謝りながらナミの元へ逃げ出した。 「何よ、走れるじゃない。心配して損したわ…。」 「おぉナミーー!!生きてたか!!!スッゲー心配したんだぜ!?」 「きゃ!?ちょっと!頭グシャグシャにしないでよ!!」 「あはははは!!!」 ナミの声にパッと顔を明るくしてそちらへ向き、 溜息をつくナミの頭をグシャグシャ撫でたら文句を言われた。 でも、それが嬉しくて思わず笑うと、ナミは「ったく…。」と呟きながらも笑ってくれた。 顔はまだ少し赤身を帯びているけど、息も荒くないし…本当によかった。 俺はもう一度ナミの頭にポンと手を置いた。 今度は何も言わず、ナミはもう一度笑ってくれた。 「女の子ってのはやっぱりいいもんだなぁ〜。」 「そうか?」 少し離れた所でサンジがぽつりと呟いた。 □■□ 「仲間になってくれ!!頼む!!!ばあさんっ!!!!!」 テーブルに両手をついて身を乗り出し、本気でドクトリーヌを勧誘するルフィ。 いやいやルフィ…、その口説き方は失礼だろう…。 ナミの横で椅子に腰かけた俺は内心突っ込んだ。 「口にゃ気をつけるこったね!!! あたしゃまだツヤツヤの130代だよ!!!」 「うぶっ!!!」 「おぉ…。すげェババアだな…。」 案の定ドクトリーヌの蹴り(しかも強い)の餌食となり、 同意して呟いたサンジも彼女の餌食となった。 本当、こいつ等面白いよなー! ルフィがまだ執拗に勧誘している時、出入り口に顔だけを半分隠して覗いている 青い鼻のトナカイにルフィと復活したサンジが気付いた。 普通逆だよな…覗き方…。 そう悠長に思いながら「トナカイ料理!!」と ルフィとサンジに追われ叫びながら逃げ出した彼を見送った。 「待っててナミさん、ちゃん!! 精のつくトナカイ料理を作るからねw」 「その前にお前らをあたしが食ってやるよ!!!」 「ぬあっ!!ッババァ!!!!」 「包丁持ってんぞ!!!」 ギャアギャア叫びながら、彼等は部屋を飛び出した。 「…あいつ等って本当、元気だよなー。」 「料理はいいから大人しくしててほしいわ…。」 「あはは!そりゃ無理な話だろ!!!」 俺がナミの発言を否定し、彼女も「それもそうかも…。」と頭を抱える。 そしてふと、ルフィ達が出た出入り口を見ると 城の中の筈なのに雪が舞っていることに気付いた。 人間ってのは不思議なもんで、そういうことに気付くと余計寒さが増すものだ。 俺達も例外ではなく、寒さを防ごうと扉を閉めようとナミがベッドから起き出た時 「寝てろよ、ちゃんと!!お前まだ熱があるんだぞ!?」 「そうなのか!?」 「ないわよ。もうほとんど引いたみたい。」 「でもだめだ!」 息を切らしてさっき逃げた青っ鼻トナカイ…チョッパーが 部屋の中と外をキョロキョロとルフィ達の有無を確認しながら現れた。 え?名前を知ってる理由? …さっきまで見ていた夢の主人公がコイツだからだ。 最初は信じれなかった。 でも、チョッパー…しかも2本足で歩き、喋るトナカイなんて他にいないだろう? ヤブ医者とケンカして仲直りの時に貰っていた×印の入ったシルクハットも被ってるし。 認めざるを得ないのさ。 ……クスっ、不思議な縁だな。 そう思いながらナミとチョッパーのやり取りを見守った。 どうやらナミを看病していたのはチョッパーらしく、ナミがお礼を言うと 「人間なんかにお礼を言われる筋合いはねェ!!ふざけんな!!!」 と言葉は乱暴だが、顔はうきうきニコニコ、体は左右に揺すって喜んでいる。 「「感情が隠せないタイプなのね。」」 ナミと二人で声をはもらせた。 こいつ可愛いなー。 俺達が海賊なのか、とかドクロの旗を持っているのか、とか聞きながら そろーり近づき、ナミの手にチョンっと触ったり、 ナミが海賊に興味があるのかって聞いたら 「ねェよバカ!ねェよ!!バカッ!!!」と勢いよく後ろへ飛び、 本棚へ背中から突っ込んだ。 あはは!素直じゃねぇなー!! そんなチョッパーに向かって 「じゃあ…あんたも来る?」 ナミが満面の笑みで勧誘した。 「おぉ!そりゃいい!! 医者がいてくれればこの島に長いしなくて済むし!! 一緒に来いよ!!!」 「それに今、ウチの船には…。」 「バカいえ!!おれはトナカイなんだぞ!? 人間なんかと一緒にいられるか!!!」 俺も一緒に勧誘し、ナミが続きを話すと、彼は最後まで聞かずに声を荒げた。 まるで何かに怯えるかのように…。 「おれを見て…恐くないのか…!? おれは…トナカイなのに2本足で立ってるし、喋るし…。」 「ふふっ!なに?あんた私達を恐がらせたいわけ?」 「………。……青っ鼻だし…。」 チョッパーが最後にポツリと呟いた時、再びルフィとサンジに見つかり 一目散に逃げて行った。 …なぁチョッパー。 ドクトリーヌと一緒にいる今もお前の傷は癒えていないのか? やっぱりお前は人間に心を開けないのか? 「お前はあんなにも優しいヤツなのに…。」 チョッパー達が出て行った出入り口を見つめながら俺はポツリと呟いた。 << BACK NEXT >> |