「“ハイパー雪だるさん”だ!」 「雪の怪物“シノラー”だ!!」 「あはははは!お前等甘ぇよ!!見ろっ!!! “ハイキングベアー〜本日ネギが特売ね!2本頂くわ♪〜”だっ!!! さっき一度見ただけなのにこの記憶力…! 俺ってスゲーだろ!?」 「てめェらブッ飛ばすぞ!!! ちゃんもそこに直れっ!!!!!」 ルフィとウソップの力作がサンジによって破壊されてしまった。 あぁ…勿体ない……。 ルフィとビビの心意気が通じたのか、四角いおっさん…ドルトンって言ったか? は、俺達を村へ案内してくれた。 ドルトンさんの家は暖かくて、すぐにナミをベッドへ寝かせてもらった。 それでもやはり苦しそう事には変わりなく。 サンジに怒られ、家へ入るや否や俺はタオルを借りて濡らしたそれをナミの額へ乗せた。 ドルトンさんの入れたお茶をすすりながら窓の外へ視線を移す。 視線の先に見える高い山々。 その上にうっすら見える城。 どうやらそこに“魔女”と呼ばれるこの国唯一の医者… “Dr.くれは”が住んでいるらしい。 その人は140近い年齢らしく、少し変わり者らしいく、通信手段がない。 (しかもうめぼしが好きとか。) 彼女は気まぐれに山を降りて来て患者を探し処置をする。 そして報酬にその家の欲しい物をありったけ奪って帰っていく。 ルフィも言ってたけど、本当に海賊みたいだな! あ、でも月夜の晩にそりに乗って空をかけ降りてくる所を目撃されているとか。 じゃー空賊だな!!…あ、でも山に住んでるから山賊か? まぁどっちでもいっか! 医者としての腕は確からしいんだけど…。 「あの山を登るのかー…。」 「んな!?ちゃん、まさかその怪我で行くつもりかい!?」 「え?ダメか??」 「まだ銃弾は入ったままなのよ!? やっと血も止まったのに…ほら、手も少し痙攣してる!!」 「ビビ。これは武者震いだよ。」 「ふざけないで!!!」 ふざけてないんだけどなー。 まぁ、まだ痺れてるし実は痛いし、手も動かしにくいのは事実だけど。 でもビビが止血してくれたし。包帯も巻いてあるし。 …お気に入りのコートに穴開いて赤く染まっちまったのはショックだけど。 「大丈夫だって。…それに、医者に会わなきゃいけねーんだ。」 ビビとドルトンさんだけ頭に大きな「?」を浮かべて首を傾げた。 他の3人は黙って俺を見つめている。 俺はその視線から逃げるように顔を伏せた。 本当は医者になんて会いたくない。 体を診てもらった所で結果はわかっている。 …でも、いつ死んでもいいと思っていた俺に欲が出てきてしまった。 もう少しこいつ等と一緒にいたい。 こいつ等と一緒に世界を一周してみたい。 俺の唄を残したい。 そして、会いに行くんだ。 こいつ等と一緒に、あの仲間思いのクジラと…誇り高き戦士達に。 俺はそっと目を開いた。 ルフィがナミを呼ぶ声に顔を向けると ぺちぺちとナミの顔を叩きながら彼女を起し 「あのな、山登んねェと医者いねェんだ。山登るぞ。」 「「「「!!!!!!」」」」 ふふ…、さすがキャプテン。 そう言うと思った! 慌てて抗議をするサンジとビビ。 それでもルフィの意思は変わらない。 「てめェが行けてもナミさんへの負担はハンパじゃねェぞ!」 「でもほら…もし落っこちても下は雪だしよ!」 「あの山から転落したら健康な人でも即死よ!!」 「大丈夫だよ。俺が下から支えるから。」 「だからさんは自分の怪我を考えて!!」 「こんなの怪我じゃねぇって。」 「重症よっっ!!」 「…ふふっ」 笑い声の主を見ると、ナミはモゾリと布団から右手を出し 「…よろしくっ!」 「そうこなきゃな!任しとけ!!」 再び笑ってルフィと ぱしんっ とタッチを交わした。 …ふふ、さすがこの船の航海士! 俺は笑いながらナミの頭にポンと手をおいた。 「よし、おれも行く!!」 サンジも山登り組に加わり、俺とルフィの3人で行くことになった。 ビビとウソップは「足を引っ張るから」と自ら残る事を志願した。 …そんなことはないと思うんだけどな。 ナミをおぶったルフィの腰にしっかりと紐で固定する。 ウソップも言ってたけど、ルフィが一度でも転んだらナミは本当に死んでしまう筈。 そのくらい弱っている。 俺とサンジがしっかりサポートしなきゃな! 俺が決意を固め、ぐっと拳を握り締めていると 「も!無茶だけはすんなよ!?」 ウソップがズイっと俺の前に来て忠告をした。 何だかそれが嬉しくて、くすぐったくて。 「…ふふ、なるべくそうするよ。」 そう言って軽く笑った。 「じゃーいくか、サンジ、!!ナミが死ぬ前にっ!!!」 「縁起でもねェこと言うんじゃねェ!このクソ野郎!!」 「あはははははは!!!!」 目指すは魔女の城。 俺の命に代えてもこいつらを守ってみせるよ。 だから…。 もう少しだけ、俺を守ってね? ね?ギンさん…………。 << BACK NEXT >> |