友の死を悲しみ泣くブロギーさん。

島中に響き渡る泣き声に誰もが耳を塞いだ。

呼吸と震える手を落ち着かせる為に肩に乗せて貰っていた俺は

つい先刻やってきたルフィが腕を伸ばして下に降ろしてくれたから

鼓膜への直接攻撃は避けることが出来た。

俺は今、ゾロの座っている切り株に三角座りで背を預け、耳を塞いでいた。

しかしスゲェな。

何がスゲェって涙が滝になって虹を作り、更には俺達の足元は大きな池が出来ていた。

うーん…やはりデカイだけに規模が違うな。

でも、このでかさは亡き友への悲しみのでかさだと思うと胸が…

そう思った時。







ムクッ!!!



「「「「「「「!!!!?」」」」」」」







死んだと思った友が起き上った!

うぉー、ビビった!!

全員で目を30pは飛びだしちまう程ビビった!!

ハァハァと荒い呼吸をしながら友、ドリーさんは命を繋いだのは武器だと告げた。

なるほど。100年の戦いに付き合いきれなかったのか。





「途方もねぇ…。豪快な奇跡だ!」





ウソップの言葉に、命ある事を喜び、神に感謝する彼らに、

俺は眼を細めて笑った。

そして喜び合っていた筈なのに喧嘩になってしまった彼らにお腹を抱えて笑った。

ナミのツッコミが一際輝いた瞬間だった。









ブロギーさん達の家へ移動することになった時。

俺は命をかけて手に入れた卵を思い出し、慌てて取りに行き、

先を歩く仲間を追いかける。

すると先陣をきって歩いていると思っていたルフィが俺を待っていた。





「おー、ルフィ。待っててくれたのか?」

「まーな!お前場所知らねぇだろうし!」

「そうか…さんきゅ!」





俺が笑うと、ルフィも「しししっ!」と言いながら笑い返してくれた。

その笑顔を見ながら並んで歩き出した時、

ルフィは笑っていた顔をゆっくりと真剣な顔に変えて俺を見た。

不思議に思って「どうした?」と聞くと

足を止めて俺の顎を掴み、口元をグイと拭き







「無理すんな。」







眉を八の字にしてそう言った。

俺は少し目を伏せて視線を下に泳がせ、ルフィの手を払って足を進める。





「無理なんてしてねーぞ?」

「嘘つくな。

 さっきから咳するの我慢してるだろ。」

「……。」

「俺達に心配させねーようにしてんじゃないのか!?」





少し先を歩く俺に向かってルフィが叫ぶ。

俺は返事をしなかった。

…ルフィの言っていることは図星だったから。

咳をしたくて仕方なかった。

でも、それをしたらきっと血を吐いてしまう。

だから我慢した。

あいつら、バカみたいに心配するから。

そんな顔は見たくねぇ。

折角ドリーさんも生きてたんだ。

俺が血を吐いちまったらそんな素晴らしい時間に水を差すだろう。

それに、これを堪えるのも俺にとっては戦いの一つだ。

俺が死ぬまで続く…長くて孤独な戦い。

隠すのは上手い方だと思っていたんだけどな。

まったく…。

いつもボケっとしてるくせに何でこんなに鋭いんだ。

俺は小さくため息を一つ吐き、





「…ルフィ。」





静かに名を呼んで肩越しに視線だけを送る。







「前にも言ったけど、俺はいつ消えるかわかんねぇんだ。

 それが怖いわけじゃない。

 あの日、自分の選んだ道を後悔したことなんて一度もない。

 それに俺はもっとお前たちとバカやってたいんだ。

 そんな八の字眉毛にした心配面は見たくない。

 でも、俺のその気持ちが…行動が、ルフィをそんな顔にしてしまったんなら…。」





足を止めて、ちゃんとルフィの顔を見て。











「ルフィの前では無理をしないって…約束するよ。」











そっと微笑むと「わかった。」とルフィも笑った。

俺の答えに満足したのか、気を良くしたルフィは走り出し

俺の腰に腕を回して脇に抱えた。



「おいルフィ!降ろせ!!」

「いやだ!それにこの方が早ぇ!!」

「いや…確かにそうだけど…。」





せめて横抱きにするとか…このままだと頭に血が昇るっての!!

反論しようとしたが生き生きとした顔を見てやめた。

俺の体を心配してくれてるんだろうし…。

俺は一つ息を吐き、苦笑した。



気付けば喉まで出かかっていた咳はどこかへ行ってしまっていた。








































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