ゾロの肩からドサリ、と少々乱暴に尻から降ろされ 俺は「ぐえっ!」と、カルーのように鳴いて大地に寝転がった。 発作の時のような苦しさはもうないが、まだ呼吸はしにくかった。 ヒューヒューと口から変な息の音が漏れる。 恐怖は完全に消え去ったわけではなかったから手はまだ震えていた。 そんな俺をナミ・ウソップ・ビビが駆け寄った。 心配そうな顔を覗かせて 「さん、大丈夫!?」 「あ…はは…。なんとか…。」 「お前汗びっしょりじゃねーか!」 「そりゃー炎の中にいたんだから。 つーかウソップ…、他にやり方なかったのかよ?」 「わ…悪ぃ!他に思いつかなかったんだ!」 「ふふふ…、冗談だよ。ありがとう。 ナミ、悪いけど後で服一枚貸してくれねぇ? 倍にして返すから。」 「それなら全然OKよ! それにしても、さっき血吐く程咳してたけど 本当に大丈夫なの!?」 「あ…あれは…まぁ、よくある事だし…今は平気。」 そう言って力なく笑うとナミは鬼の形相をして 「よくあるわけあるかー!」と叫びながら俺の額にチョップを落とした。 うぉぉぉ…!マジで痛い…!! そういや俺の体の事は話してなかったかも。 知ってるのはルフィとサンジか…。 ふとゾロをみると、彼は無言で俺を見つめていた。 そんな視線を軽く笑って交わすと震える手を地につけてゆっくりと体を起こした。 「無理をするな。」と心配するウソップとビビに片手を上げて 「大丈夫。」と返し、顔だけ後ろを振り返り自分の何百倍もある巨人へ向けた。 「あんたも無事でよかった。 にしてもでかいな…巨人族か?」 「そうだ!誇り高き“エルバフの戦士”ブロギー師匠だ!!」 「師匠って…弟子入りしたって事はウソップ。 巨人になるのか?」 「なるかーーー!!!」 「あはは!冗談だよ。 エルバフは昔、本で読んだことがある。 本の中の種族に会えて光栄だよ、ブロギーさん。 …初対面なのに申し訳ないが頼みがあるんだ。」 「頼み?」 俺はヒューヒューと呼吸を整えながら 「あんたの肩に乗せてくれないか?」 少しでも空へ近付けば少しは落ち着くと思う。 俺の頼みを快く承知してくれたブロギーさんは血みどろの手を伸ばし 俺を乗せて肩へ運んでくれた。 トン、と降り立ち、お礼を言ってマントの皺に寄り掛かって座る。 一度目を閉じ、そっと開いて空を見つめる。 前にも言ったけど俺はギンさんがそこにいないことはわかっている。 それでも天に居て欲しいという願いは消えなくて。 その願いも込めていつも空を見つめ、彼を想いながら唄っていた。 今も唄いたいのに、力が出なくて唄えない。 残念だが仕方がない。 ただただ、想いを馳る。 それだけなのに、ギンさんが傍にいてくれるような気がして 自然と呼吸は落ち着き始め、手の震えは止まっていた。 あぁ…やっぱり貴方がいないとだめなのね…。 自分自身に苦笑した。 ズルズルと力なく崩れ、完全にブロギーさんの肩に寝転んだ時 熱くなる目を腕で隠し 「ブロギーさん、ありがとう。」 空へ近付けてくれたこの人に心の底からお礼を言った。 「気にするな。」と言う返事を聞いて「うん。」と返す。 こんな俺を見て、下にいるクルー達が何を思ったかは知らない。 …ごめんな。 ちゃんとお前達の所に戻るから。 だから今だけ…もう少しだけ、彼の元に居させて。 服が燃えて露わになった腕の隙間から涙が流れて止まらなかった。 << BACK NEXT >> |