目の前にいる敵は4人。 3という数字を綺麗にセットしたヅラを被った愉快なおっさん。 「私の芸術品」という発言から察してゾロ達はアイツに捕まったらしい。 アイツの相手はルフィがしている。 ウィスキーパークで会ったハナクソとオレンジ。 たまにウソップの火薬星を食いながら戦っている。 …やっぱアイツは変人だ。 クリクリした目の帽子を被ったオサゲちゃんは煎餅食べながら我関せず。 よし、そのまま最後まで参加するんじゃねぇぞ!! 俺はケーキ(だよな?)の土台まで走り、勢いよくジャンプした。 「これ壊したらお前らに貸し1つな!!」 そう言いながらゾロ達の横へ降り立った。 そこは霧のような細かいものが降っていた。 少し暖かい気がしたが気にせず再び愛刀を握りしめて飛んだ時。 「キャハハ!あんたの好きにはさせないんだから!!」 ハナクソが放った爆風に乗ってオレンジが俺の元までやってきた。 「げっ!お前…っ!」 「“一万キロプレス”!!」 「うおっと!!」 ドスゥゥゥウン!!! まるで隕石でも落ちてきたかの様な轟音が響く。 空中で間一髪体を右へ逸らして避け、華麗に着地した。 体重を自在に操れるから重くもなるし軽くもなるんだけど…。 あの着地音は女を捨てた俺でもちょっと頂けないなぁ。 俺はキャハハ、と笑うオレンジを憐れみを込めて見つめ、 「ドスゥゥゥウン…。」 「ひ…人が気にしてること言うんじゃないわよー!!」 やっぱり気にしてたのか。 まぁいい。怒りで我を忘れてしまえ。 俺はニヤリと笑い、刀を鞘に納め拳を握った。 怒りでヒートアップしたオレンジは再び高く舞い上がる。 「人をバカにするんじゃないわよ!! “一万キロギロチン”!!」 片足を伸ばして先ほど同様落ちてくる。 俺はそれを見つめながら 「戦いの最中に感情的になるのは良くないよ。」 言いながらオレンジの少し上までジャンプし、 両手を絡み合わせて頭上で組んだ。 「…こんな風に隙をつくるからね。」 「なっ…!?」 「― ふっ!!」 ドンっ!!!! 力いっぱいオレンジの脳天を両手で叩きつけた。 自分の落ちる勢いに乗せられた衝撃はオレンジの落ちる速度を倍増させた。 ドゴォォォオオオン!!!!! 「ま…俺もなかなか上手くいかないけどね。」 地に埋まり気絶したオレンジに向かって俺は笑って言った。 元の標的へ振り返るとナミが喜びながら“早く壊して!”とご要望。 どうやらアレを壊さないと皆が蝋人形になっちまうらしい。 …もっと早く言ってくれよ!! 慌ててケーキホールへ戻り、ジャンプしてゾロ達の横へ立った時。 突然体がギシギシと音を立てて動きにくくなった。 「な…何だ!?」 「あなたの体も固まり出したの。 蝋人形になるのよ。」 「っ!!?」 俺の言葉にオサゲちゃんが煎餅を食べながら答えてくれた。 緊張感ないなぁ!羨ましい!! そんなことを思いながら自分の体を見ると、 そこかしこ白くて固いモノがこびりついていた。 そしてそれはみるみる広く広がっていく。 「もしかして、これが蝋な…っ!ゴホ!!」 なんだ!?息も苦し…っ!? 「!この霧のせいなの!! これのせいで体の中も蝋人形になっちゃうのよ!」 「な…に……っ!?」 だから、そーゆー肝心なことはもっと早く言ってくれよ! 俺は口元を手で押さえ、ギシギシ音を立てながら片膝をついた。 ヤバイやばい! 咳が止まらない!! 「ゴホ!ゲホゲホッ!!…ガ……ッ!」 「「「!!!?」」」 咳のしすぎで喉を切ったのか、それとも毒がざわついたのか。 俺は手のひらからあふれ出す程の大量の血を吐いた。 心臓がバクバクいって止まらない。 咳も止まってくれない。 呼吸もしにくくて苦しい。 体中から力が抜けていくのがわかる。 だけど! 俺は口元を手で拭って勢いよく振り払い、腕を滴る血を払い飛ばした。 そしてビビの横にドカ!と胡坐をかいて座り、愛刀を突きたて 柄に両掌を重ねて乗せた。 「ゲホっ!ゾロが…何でそんなポーズしてんのか分かった。 固まるんなら…ゴホ!そのポーズがいいんだな…?」 「へぇ…!よくわかったな。」 「…お前バカだな。」 「んだとテメェー!?」 「でも…俺も固まるなら…このポーズがいい。」 ビビ、ゾロ、ナミの順に真っ直ぐ見て、笑いながら 「どうやら俺も同類みたいだ…!」 3人は笑って返事をした。 俺は愉快なおっさんと交戦しながら 俺達の心配をしていたルフィを咳交じりに呼び、 ゾロ達同様に真っ直ぐ見てニッと笑った。 「あとは宜しく!」 ルフィはガチンと拳をぶつけ「任せておけ!」と返事をした。 << BACK NEXT >> |