病状が悪化したギンさんは俺と二人でいたい、 と言って3日間だけ船を降りて小さな島の空き家で生活を始めた。 船から食糧や生活必需品を持って…。 3日間だけだったけど、俺は幸せだった。 3日間の理由は、1日2日じゃ短い気がする、と彼が言ったから。 でも何よりも船の上で死にたい、と言う彼の願いを叶える為でもあった。 …でもそれは、叶うことはなかった。 3日目の朝、彼の咳と吐血は止まらず、体を起こすことさえ出来なくなった。 「そんな状況なのに…ギンさんは俺の手をしっかり握り返して言葉を紡いだ。」 ―――俺が逝ったら好きなことをすればいい。 「喋るなって言っても、言葉を紡ぎ続けたの。」 ―――そうだな…麦わらさん達の船なら、俺も安心して見ていられる。 「バカなんだよ…あの人…。」 ―――――ほら、唄ってくれよ。 「血、吐いて。息も荒くて。 それでも…私に向かって言うんだ。」 ――――俺はお前の唄と笑顔が最高に好きなんだぜ? 「私の好きな顔で笑うんだ。」 ―――――、誰よりも愛してる。 俯いたまま、それ以上話さなくなった… いや、話せなくなったちゃんの頭を俺は優しく撫でながら言う。 「……話してくれて、ありがとな。」 ブンブンと首を横に振るちゃん。 その姿にひどく胸が締め付けられた。 彼女は気付いているのだろうか? 話していくうちに自分が『女』になっていた事に。 どれだけギンを愛していたか、一目瞭然だった。 暫くして彼女は眼を擦り、パッと顔を上げて 「ギンさんがそう言ったからこの船に来たけど… 俺、今は自分の意思でここにいるんだ! ここはスゲー居心地がいいしな!!」 そう言って『いつもの』が笑った。 そしておれの後ろを見て 「あぁーーーー!!! あの鳥超近い!今なら捕まえれそう!! ごめん、サンジ!また後でなー!!」 そう言って嬉しそうに走って行った。 彼女が無理をしているのはわかっていた。 鳥の背中で唄いたい理由もわかっていた。 「少しでも空に近い場所…か。」 ポツリ呟いて俺は新しい煙草に火をつけた。 << BACK NEXT >> |