俺の生まれた村はワインに使われる果物栽培を主とする

のんびりした小さな村だった。

村人同士は仲が良く、皆の笑顔しか思い出せない。

収穫の時はいつも小さな祭りを開いた。

と言っても、皆で飲み食いして騒ぐだけだけど。

俺の家族は全員音楽一家で、俺が唄って、他の家族が楽器で演奏していた。

たったそれだけの事だけど、凄く楽しくて。

一日一日が幸せだった。







「…でも、そんな幸せも終わりが来た。」

「……終わり?」





ナミの質問に俺がゆっくり首を縦に振る。









「村がバイキングに襲われたんだ。」









全員の顔が凍りついた。

俺は少し困った顔をしながら話を続けた。



…運がなかったんだ。

ちょうど海岸沿いの村だったから。

あいつ等が襲って来たのは、ちょうど祭りの最中だった。

俺達が弾いて、唄ってた時に遠くから悲鳴が聞こえて、火の手が上がった。

その場にいた全員が戸惑う中、あいつ等は視界に入った村人全員を殺した。

家をあさり、火を放ち…何故か楽しそうに笑っていた。

そしてついに逃げていた俺達家族も追いつかれた。

目の前で一瞬で散る命と、自分に迫りくる死の瞬間。

怖くて怖くて仕方なかった。

泣きじゃくる俺を支えてくれたのは姉さんで、

俺の腕を引きながら必死に走ってくれた。

それでも、子供の俺達が大人の足の速さに敵う筈がなく。

気付けば俺の後ろで斧が降り上げられてた。





…ッ!!」





ザシュッッ!!!!!





飛び散る鮮血。

色白で綺麗だった姉さんは一瞬で真赤に染まった。







俺を庇ったから。







俺は動けなかった。

姉さんの血を体中に浴びてその場にしゃがみこんだまま。

震えて動けない俺の前に船長と思われる大男が現れた。

そいつは俺を見るなりニヤリと気持ち悪い笑みを浮かべて首に首輪を付けた。





「それがこの首輪。奴隷の証。

 一人だけ生き延びた…俺の枷。」





全員が静かに俺を見つめる。





「なんで…さんだけ……?」

「どうやら上陸した時に聴いた俺の唄を大層気に入ったらしくてな。

 喉が潰れるまで唄ってもらうって言ってた。

 でも、それは実現しなかった。」

「え…?」





ビビの問に答えた俺は皆を真っ直ぐ見て口を開く。









「ミホークが来たのさ。」









ミホークの名に、ゾロがピクリと反応する。

あいつは村に祭りの時期にやって来ては村人と飲んでいた。

あの日もいつも通り来た。

あいつが来たのもただの偶然だ。

でも、首輪に鎖も付けられ、タイヤの様に引きずられていた俺を

音もなく現れ、音もなく鎖を斬って…助けてくれた。

あの時のミホークは本当に凄かった。

気付いた時には村で動いているのは俺とミホークだけだった。

燃え盛る炎の中、あいつは地面に横たわる俺の前に立った。











「俺と共に来るか?」











俺の選択肢は一つしかなかった。




































<< BACK   NEXT >>