「ゲホッゴホッ!!」 「おい、…大丈夫か!?」 「だ…だいじょうぶ…。 木片を少し吸いこんじまっただけだ。 …ゲホッ!!わりぃ、うがいしてくる。」 心配しながら顔を覗くルフィにそう言って 俺は口元を押さえたまま洗面所に走った。 これは…ヤバイ!! 勢いよく扉を開けて洗面台に顔を向けた。 と、同時に俺は口から大量の血を自分の意思とは関係なく吐き出した。 そして思った。 いや、思わずにはいられなかった。 俺の命は、後どのくらいなのだろうか…。 肩で息をしながら口を拭い、洗面台に水を流して血を洗い流す。 暫く立ち上がれない程、今日の俺の体は衰えていた。 何とか落ち着いてデッキへ続く扉を開けると、 見知らぬカウボーイハットを被った女が手すりに手をかけ、 堂々と立っていた。 「!?!?!?!?!?」 「あら…他にもいたの…。」 「……何だテメェー?」 …なんか見たことある顔だな。 どこで見たんだろう…。 少し不思議に思いながら仲間に女の素性を聞くと どうやらクロコダイルのパートナーのようだ。 思わず少し身構えると、女はふふっと笑って 「そう身構えないでよ、“鷹の子”…さん? 今の私に戦う理由はないわ。」 「…その名で俺を呼ぶんじゃねぇ。」 今は前みたいに怒り暴れる元気もねぇ。 だから抑えたけど、いつも通りだったら血祭りししてる所だったぜ! 静かに怒りながら俺が睨みつけると、 再び女は笑い、“失礼”と謝り、俺の横を通って船を去った。 どうやらカメに乗って去ったらしく、ルフィとウソップがやけに騒いでいた。 そんな彼らを遠くに感じながら俺は一番下の階段に腰を下ろし、 小さいため息をついた。 と、同時にふっと俺に影が重なる。 「…、大丈夫か?」 ゾロだった。 彼は俺と同じ目線にまでしゃがみ、真っ直ぐ俺の目を見た。 俺もゾロの目を見ながら“何とか”と返事をした。 ゾロの言いたいことはわかってる。 「“鷹の子”…の話だろ?」 俺が聞くと、彼は少し驚いた顔をしたが 「途中だったからな。」 と口の端を少し上げて答えた。 “鷹の子”と言う言葉に反応して、 ナミから状況を聞き終わった皆が俺に視線を向ける。 「私も是非聞きたいわ! 何よ、“鷹の子”って!! まさか“鷹の目”ミホークの子供って言うんじゃないでしょうね!?」 「………。」 ナミの言葉を聞いて 俺は視線を少し下げ、薄く笑った。 そして口を開く。 「…子供みたいなもんさ。」 どこから話せばいいものか…。 俺は言葉を選びながら、昔を思い浮かべていった。 皆の視線が痛い程よくわかる。 それを受け止めながら、俺は腰にある愛刀を握りしめた。 << BACK NEXT >> |