冬時々春。 不思議な天候の中、今日も船は前進する。 「さっむーーー!! 、あんたよくそんな薄着でいられるわね…。」 「ん?あぁ。 俺は“北の海”出身だから、寒さには強いんだ。 …逆に熱いのは苦手だけど。」 鍋で温めたミルクをカップに注ぎ、 ホカホカと白い湯気を上げるホットミルクをナミの前に置く。 「おいキミ。 この船には暖房施設はないのかね。」 「寒いわ。」 「うっさいわねあんた達! 客じゃないんだから雪かきでも手伝ってきなさいよ!!」 「あっはっはっはっは!!!まーまー! ホレ、あんた等もこれでも飲んで温まりなよ。」 「は優しすぎるわ…。」 「え?もちろんこれ飲んだら雪かきしてくれるんだろ?」 「「誰がするかーーー!!!!」」 寒さに毛布で身を丸めるMr.9とミス・ウエンズデー。 さすがパートナーだけあって息ぴったりだな!! Mr.9の横に腰かけてホットミルクを飲む。 「はー…うめぇー…。」 「本当!温まるわぁ〜。」 「だろ!?寒い日はさ、これが一番なんだぜ! 昔、こんな寒い日によくミホー…」 はっとして続きの言葉を飲み込んだ。 寒い日は、よく飲んでいた。 寒さに震える幼い俺に、あいつはいつもホットミルクを淹れてくれたから。 思い出すのは、めちゃくちゃ美味かったってことと、 口の端を上げるあいつの…顔。 「…?」 「あ…。すまん、何でも…。」 急に黙った俺に、ナミが声をかける。 と、同時に ピシャ!!ゴロゴロゴロ!!! 「雷…!?一体どうなってんの、ここの気候は!!」 ナミが叫ぶ。 …雪の中の雷。 初めてみたけど、きれいだな。 昔は怖かった雷。 でも、今はあいつのお陰で全然平気なんだぜ? え?何でかって?? そりゃ、修行で“雷を斬って来い!”って放り出されりゃーねぇ…。 つか、ありえねぇだろ!? 意味わかんねぇだろ!? しかも渡されたのは飛雷性バッチリの長剣だぜ!? もちろん、俺は黒こげだし…。 未だに外れない手錠と首輪のお陰で命は助かったけど… あぁ…思い出すだけで震えが…。 ふん!もう知るか、あんな奴!! 次会った時は絶対シカトしてやるん…! 「物思いに耽ってないでないであんたも手伝えーー!!!」 「くぼはぁっ!!!」 痛ってぇー!! ナミの後ろ蹴りはマジ痛ぇ!! 蹴られた部分をさすりながら甲板に出ると、 既に野郎どもが舵を切っていた。 うぉ!これは悪いことをした!! 何故かMr.9とミス・ウェンズデーも手伝ってるし。 風が変って春一番になったり、霧が出たり、氷山にかすったり。 こんな時に起きないゾロを見てなんだか腹が立った。 「おい、こら、ゾロ!起きろっ!!」 「ぐーっ。」 どんだけ眠りが深いんだ、この野郎! 俺はツカツカと近寄り、ゾロの前に立って拳を振り上げた。 「ゾーロォー!! 起きろてめぇ!!…うぉっ!?」 ぎゅぅ。 拳振り降ろしたら手首を掴まれて。 そのまま引っ張られて気づいた時、俺はゾロの腕の中。 うぉわぁぁ!!顔が近けぇ!!! バタバタもがいてもやっぱり、男の力に敵うわけもなく。 「うわーん!ゾーロー!はーなーせー!! 誰かヘルプミー!!!」 「「「「!?!?」」」」 「てめぇ、このマリモ!!」 サンジさんがベリっと俺をゾロから剥がしてくれた。 「大丈夫か!?」 「サンジさーん!ありがとーー!!」 ぎゅぅ、と思わず抱きついてお礼を言う。 痣が出来るかと思ったぜ…っ! 「ちゃんの為ならいつでもナイトになるよv」 俺の頭を優しく撫でながら言うサンジさんに笑顔で返事をする。 何となく顔が赤いような気がしたけど…まぁ、いっか。 もうすぐ船は一本目の航海を終わろうとしていた。 << BACK NEXT >> |