「なぁエース。 そろそろ降ろしてくれねぇか?」 無事にスモーカー君率いる海軍から逃れた俺とエース。 誰1人として追いかけてこないにも関わらず エースは腕に抱えた俺を降ろそうとしない。 それどころか顔を覗きこんで 「まだ震えてるじゃねェか。」 と俺の肩を掴む手に少し力を込めた。 俺の心臓がドキリとする。 震えていた事がバレていたと思うと異常な程顔に熱を感じた。 そんな顔を見られたくなくて俯いて。 「大丈夫だっ!」 少し強がってみせた。 そんな俺を見てエースが突然声を上げて笑った。 「な…っなんだよ…!!?」 「は本当に気が強いんだな! また海軍がきてもおれがいるから安心しろって!!」 「ばっ…!ちげぇぇぇぇえ!!! 海軍なんて怖くもねぇよ!俺が怖いのは……っ!!」 火。 そう言いかけてやめた。 だってエースが怖いみたいだろ? 本人を否定するみたいで…言えるわけがない。 「“…怖いのは”、何だ?」 「………………何でもねぇ。」 「そこまで言ったら気になるだろうが!!」 「………。」 いつの間にかエースは足を止めていた。 互いに目を逸らさず真っ直ぐ見つめて。 何でかな? 言おうと思ったのに泣きそうになるんだ。 それに気付かれたくなくてエースの胸に顔をうずめた。 ドクドクと聞こえるエースの鼓動が妙に安心感を与えてくれる。 「俺が怖いのは…火。 壁の様に立ちふさがる炎。 全てを飲み込む…赤く揺らめく……火だ。」 エースは何も発しない。 「昔、故郷を焼かれてから…なんだけど……。 でも信じて欲しい!エースは平気だ!! 怖いのは“火”であってエースじゃない!!」 「だってエースはこんなにも暖かい…!!!!」 思わず声を張り上げて 今にも泣きそうな顔を上げて エースをとらえて言う。 驚いた顔をしたかと思ったらエースは再び声を上げて笑った。 「な…何で笑うんだよ…。」 「べつにぃ? そーかそーか、“火”はダメでも“おれ”は平気なのか。 そーかそーか!!」 「?????」 全くもって意味がわからない。 それでもエースは嬉しそうに笑っている。 まぁ…エース自身は平気なのだと理解してもらったと思っておこう。 俺は再びエースの胸に寄りかかるように体重を預ける。 小さく聴こえる胸の鼓動は変わらず優しく俺の中に浸透する。 「あぁ…落ち着くなぁ…。」 俺の言葉にエースは優しく笑う。 出会って間もない人間にここまで心を開いたのは初めてだった。 << BACK |