SUN RISES CANDLE





「まだ線書いてない人〜!?」

「はいはい!あたしまだ!」


夕食を終えたクルーたちが、テーブルを囲んで何やら騒いでいる。


「あ゛〜〜〜!!!3日連続夜の船番だぁっ」

、ざんねーんっ」

「あんれェ?俺もだ〜!夜って腹減るんだよなァ〜」

「弁当置いといてやるからちゃんと船番やれよ、ルフィ」


麦わらのルフィ率いる麦わら海賊団は、毎日の役割をあみだくじで決めるらしい。
意外に地味なのだが、ジャンケンやポーカー等のゲームで決めると
ロビンあたりに勝ちが偏ってしまってどうしようもないので
この方法がみんなにとって平等だということになった。


「明け方くらいまでには次の島に着くと思うのよね。その頃起こしてね!」


ナミは可愛くウインクすると、「さァ、寝よ寝よ!」と女部屋へ向かう。
「そんじゃあよろしく〜」等と、他のクルーたちもそれぞれ部屋に戻っていく。
早々に船番弁当を作りあげたサンジは、ルフィに弁当を渡したあと
「はい!ちゃん!」との好きな温かいキャラメル風味のコーヒーを渡す。
「お、それもうまそうだなァ〜」というルフィは、
「お前は弁当喰ってろ!」とサンジに怒られる。


「明け方には次の島かぁ〜楽しみだね!」

「あァ!肉もあるしなっ」


ニカッとルフィが笑う。のコーヒーカップを持つと、「じゃ、行くか」と一人見張り台に上る。
そして腕をゴムのように伸ばし、に自分の手を差し出す。


「これちょっと怖いんだよねぇ」


はそう言いながらルフィの手を握る。


「ちゃんと捕まってろよっ」


は縮まっていくルフィの腕に引き寄せられて、一気に見張り台まで上がってくると
「きゃっ」と短く悲鳴をあげる。
ルフィの華奢とみせかけて引き締まっている体に、の体が丸ごと預けられた。
その衝撃でルフィは座り込むと、はルフィの足の膝の上に乗って、
互いに向かい合って座る形となった。
ルフィは楽しそうに笑っている。


「こんなことしなくても、一人で上ってこれるのに〜」

「俺はこっちの方が好きだ!」


そう言ってルフィは、目の前にいるをぎゅぅっと抱きしめた。


「ルフィ、苦しいよ〜・・・っ」

「あ、わりィっ」


ルフィは、力を少し抜く。
が近くにいるの、嬉しいんだァ〜」と無邪気に笑うルフィに、
はなんだか恥ずかしくなって視線を逸らした。


「でもあいつらの前でやろうとしたら、怒るじゃんか」

「だって、恥ずかしいんだもん・・・」

「だろ〜?!いましかこういうのできねェもんっ!」


・・・確かに。


ルフィは力こそ少し加減しているものの、を放さない。
後先考えずに行動するルフィだが、のこととなると
みんなの前でいちゃついてみる→が拒む→が嫌がってる→みんなの前ではやめとこう
という思考が働いていたようだ。
そういえば、こんな風に2人でいるのは久しぶりかも知れない。
は再びルフィに視線を向ける。
ルフィはと目が合うと、しししと笑ったあと、顔を近づけて唇を重ねた。


「・・・甘ェ」

「・・・ぁ、そのコーヒーが・・・」


キャラメル味だから、という言葉は、再びルフィの唇によって封じられた。
それを味わうようにルフィは、唇に、歯列に、舌を這わせる。


「んっ!うまいっ!なんか腹減ったなァ〜」


ルフィはを自分の膝の上から降ろして横に座らせると、今度は弁当を広げる。
あまりに自由な行動に、普通ならば思わず溜息でも出るところだが、
ルフィのおいしそうにご飯を食べるところや笑っているところも好きなは、
肉を頬張るルフィを見ると、自然と微笑んだ。


「そんなにおいしそうに食べてもらえたら、サンジくんも幸せだね」

「ん〜ほぉかァ?いっふもftられfdlばdsぃymphァ」
(直訳:ん〜そうかァ?いっつも怒られてばっかりだけどなァ)

「つまみ喰いするからでしょ〜?」


ルフィはモグモグ食べながら「ほぅかなァ?(直訳:そうかなァ?)」と言ったあと
ゴクンと一気に肉やら米やらを飲み込んだ。
・・・はずが、量が多すぎて飲み込みきれず、ゴクn・・・くらいで止まって
苦しくなっているルフィの背中を、はトントンと叩く。
ルフィは、「プハァ〜」と息を着く。
はあはは、と声を出して笑う。


「ありがとな!

「どういたしまして」


その後、眠ってしまいそうなので、しりとり(地味)でもしようと試みたりしたのだが、
ルフィが「みかん」とか「かいぞくせん」とか「ん」のつくものばかりしか言わないので
ちっとも続かなかった。
他にも、バロックワークスやCP9は今どうしているのだろう、という
”あの人は今”的な話をしたり、ビンクスの酒を2人で大合唱してみたりして、時間を潰した。









外が少しずつ明るくなり始めた頃、
はコーヒーカップを持ちながら、コテン、とルフィの肩に自分の頭を預 けた。


「そういえばさ〜聞いた?次の島は、島のど真ん中にすごいおっきい柱が立って るんだって!」

「聞いてねェ。なんで柱が立ってるんだ?」

「なんとかの神様が祀られてるんだって。なんの神様か忘れちゃったけど」

「そうなのか〜、肉の神様とかいねェのかなァ〜」

「・・・もしそんな神様だったらなんか・・・でかいライオンみたいなの出てき そう・・・」

「かっこいいじゃんか〜!!」

「ライオンってどっちかって言うと王様じゃない〜?」


そんなことを話していると、空がオレンジ色に染まり始める。
眩しい、と思えば日が昇り始めていた。


「明け方なのに夕方見てェだな〜」

「秋島だから、かな?日の出が夕日みたいにオレンジ色〜」

「お?あれ、でかい柱じゃねェか?」

「あ、そうだ〜!ほんとに明け方頃に着く感じだね!」


ルフィとの笑顔が、オレンジ色の日の光に照らされる。
「綺麗・・・」と、日を見つめていると、柱と日が重なり、
日の出はどんどん昇っていく。


「すんげェ〜!昇る夕日なんて初めてみたァ!」

「あたしも〜!!」


ナミを呼びにいくことなど忘れ、2人で立ち上がり、テンションも上がる。
なんて飛び跳ねてはしゃいでいる。
俺も俺も!とか言って、ルフィも一緒に飛び跳ねる。


「・・・あれ?」


は突然飛び跳ねるのをやめた。
ルフィは「なんだ〜?」と、まだ飛び跳ねている。


「ねぇ・・・あの柱の上に日が昇ったら、キャンドルみたいじゃない・・・?」


柱がロウソクで、日の光が炎。
の目には、そんな風に映っていた。
ルフィは片手を額に当てて日の光を遮るように、遠くを見るようにして、柱を見る。


「おぉ!ほんとだ〜すっげェ!炎みてェだなァ!」


「だよね!」と、は笑顔を見せたあと、「すごいすごい」とばかり言っている。
次はルフィが「あ」と声を出す。


「どうしたの?」

「そういや俺、今日誕生日だ!」

「えっ?!」


は目を丸くして、口元で両手を広げて驚き、
顔には「そうだったの?!」と書いてある。


「あ、じゃあ・・・こうしようっ」


は何か思いついた顔をすると、柱を指差した。


「柱の上に日が灯ったら、お祝いしよっ」

「ああ、じゃあ、そうしよう!」


ルフィがしししと笑うと、2人はじぃーっと柱を見つめた。
騒がしい2人の声や足音に、起こしになど行かなくても次々とクルーたちが目を覚まし出す。
2度寝が当たり前のゾロ以外の仲間たちが、眠たそうに甲板に上がってくる。


「誕生日おめでとーーーー!!!」


「ありがとうーーーーーー!!!」


元気の良い声に、寝ぼけ半分で起きてきたみんなはビクッとしたが
2人の視線の先を辿って、キャンドルのような柱と日の出を見ると、
なぜだか自然と穏やかな気持ちになり、2人を叱る気などなくなった。


「イカリを降ろすわよ〜!」


ナミの指示に従って、クルーたちが動き出す。







秋島の朝日。
柱に灯る瞬間はまるでキャンドルに灯る火のようで、サンライズキャンドルと呼ばれており
それを一緒に見た者たちは、生涯幸せに過ごせる日々が約束されると言われている。