子守唄


久々に島に上陸して、少し大きな町に足を踏み入れた。

自由行動はいつもの事だからおれは肉を求めて徘徊していた。

果物屋の角を曲がるとそこには大きな噴水を中心とした広場があって。

聴き覚えのある音楽が流れている。



この声は…か?



思わず足を止めると、噴水の下で大勢の人に囲まれて、

澄んだ唄声を届けている唄うがいた。

ちらりと聴いている人達の顔を見ると、誰もが穏やかな表情を浮かべている。

何だかおれも嬉しくなった。





、何やってんだ?」

「小遣い稼ぎ。」





唄い終わって沢山の拍手を貰って。

人だかりがなくなった時に声をかけた。

はおれを視界にいれるとサラっと答えた。

その言葉通り、が置いたのであろう瓶の中はベリーで溢れていた。





「ナミからの小遣いじゃ足りなかったのか?」

「うーん…まぁ、そんなトコかな?」

「ハッキリしねーな。何かあんのか?」





いつもと違ってハッキリしない返事。

おれは首を傾げてそう言うと、は笑いながら





「あはは!あると言えばあるかな?

 ルフィ、ちょっと時間くれよ。」

「おう、いいぞ!!」





いつも島に入るとはどっか行っちまうし、

気付くと船に戻っているから願ったり叶ったりってやつだ!



二人で並んで町を歩いた。

他愛のない話をずっとした。

もうすぐ町の外れ、という所では足を止め





「ルフィ、ここ入ろう!

 町の人が言うにはめっちゃ美味い飯屋さんなんだと!」

「本当か!?」





おれはそれを聞くや否やの腕を引いて扉を開けた。

店内は少し暗い。

でも人が溢れていて、美味そうな肉を頬張っていた。

店員が厨房から顔を覗かせると





「おぉ、様!先程は素敵な唄をありがとうございました!!

 お席へご案内致します。」

「ありがとう。」

「知りあいなのか?唄って何だ?」





席へ着くや否やに尋ねると





「さっき広場で唄う前にここへ来たらステージで唄ってる人がいてさ。

 すげぇ上手かったから無理言って一緒に唄ってもらったんだよ。」

「ふーん。……あれ?

 先に来たならまた来なくても良かったんじゃないのか?」

「それは…。」

「お待たせ致しました。」





が言いかけると、さっきの店員がでっかいステーキを持ってきた。

うぉぉぉお!一体何キロあるんだ!?

こんなでけぇ肉、久々だぞ!!

おれが目をキラキラさせて、ヨダレを垂らしていると











「ルフィ、ハッピーバースデー!!」











そう言ってふわりと笑った。

ドクンと心臓が跳ねた。





「色々考えたんだけど、やっぱりルフィには肉かなーと思ってさ。

 ここの飯美味かったし、唄のお陰で小遣いも増えたし。

 好きなだけ頼んでいいぞ。」

「本当か!?」





頷くを確認して勢いよく頬張った。

うんめぇぇぇえええ!!!

このタレ、歯ごたえ、柔らかさ!たまんねぇ!!

ガツガツ食っているとがニコニコしながらおれを見ていることに気付いた。

不思議に思って尋ねると









「ルフィの飯食ってる姿、好きだなーと思って。」









頬づえをつきながらサラリと言う。

おれはゴクンと口に入っていたものを飲み込んで





「おれ、肉も大好きだけど…。」















「一番好きなのはだからな!」











そのまま身を乗り出しての唇に自分のそれを重ねた。





「…肉の味がする……。」





真っ赤になった顔を隠し、目を逸らしては言う。

おれはそれを見ながらししし、と笑った。





その姿があまりにも愛おしかったから。





…だから。

後でもう一度伝えるとしよう。



























お題提供: 船長感謝祭