子守唄


いつもはすぐに寝れるのに、今日に限って眠れねぇ。

見張り台へ行くと、毛布に包まったがいた。





「…ルフィ?

 今日は俺が見張りの筈だけど…どうかした?」

「眠れねぇ!」

「ふーん…。珍しいな。

 ほら、入れよ。寒いだろ?」





そう言いながら、右側の毛布を腕で広げておれの座れるスペースを作ってくれた。

おれは素直にそこに座り、毛布に包まった。

毛布が貰ったの熱と、隣から伝わるの熱がやけに暖かく感じた。



海独特の波のリズムが心地よい。

今日は満月だから空はやけに明るかった。

おれはチラリとを見る。





満月の明かりに照らされたはスゲー綺麗で。







「…、何考えてんだ?」







綺麗だけど、今にも消えてしまいそうなその雰囲気を振り払うように声をかけた。

は少し驚いたような顔をしておれを見、再び視線を海に戻して言う。





「海ってさ、でかくて綺麗だけど…

 見てると時々泣きたくなる程切ない気持ちにさせられないか?

 何でだかわかんねーけど…。」





そして少し困ったように笑いながら





「そう感じた時、いつも思うんだ。」













「このまま俺が海に身を捧げても、海は拒まないじゃないかって。」













…………っ!!

おれは思わず勢いよくの肩を掴んで体ごと自分の方へ向けた。

そして目を見て言う。

















「そんなこと、2度と言うんじゃねぇ!!!!!」













めいっぱい叫んだおれは肩でゼーゼー呼吸を整えながら

そのままを自分の腕の中に連れ込んだ。





「ルフィ…?」





おれは強くを抱きしめながら言う。







「お前は死なねぇ!死なせねぇ!!

 例えお前が海に身を投げて、海が拒まなかったとしても、

 おれがそれを許さねぇ!!!

 海になんて…絶対にやるものか!!!」













「お前は…おれの隣にずっといればいい!!!!!」











そうだ。

おれの仲間は、誰一人死なせねぇ。

それでもの体に住まう毒がお前を連れて逝くというのであれば。

最後のその瞬間まで、おれの隣にいればいい。

おれの隣で、笑っていればいい。

そして唄ってくれ。

仲間の為に……おれの為に。









「ルフィ…ありがとう。」









そっとおれの耳元で囁くの声は、いつも以上に優しくて。

愛しさがおれの中で溢れ、止まらなかった。





「何か唄ってくれよ。」





おれは体を離して、の膝を枕にして頭を乗せながら言う。

は拒むことなく優しく、女の顔で笑って返事をすると

毛布をおれに掛けながらそっと唄い始る。



の唄を聴きながらおれは眼を閉じた。

こいつの体温が気持ちいい。

こいつの唄が心地いい。

優しく頭を撫でる手がくすぐったい。

おれは自然に肩の力が抜けるのを感じた。











あぁ、海よ、空よ。

どうかおれからを奪わないでくれ。











こいつのいない世界なんて、おれには考えられないから…。